更年期障害は漢方以外にもHRT(ホルモン補充療法)で治療できる時代になってきました。
更年期女性の約60%は更年期障害に悩まされており、治療をするのは約30%、HRT治療をする人は2%程にとどまっています。
まだHRT治療を実際に受けている人は少ない中、実際に治療するとなると不安に思う方も多いでしょう。しかし、HRTは日本では目新しいものに見えますが、海外では15年以上実績のある治療で、効果についても非常に期待の高い治療法です。
更年期障害に困っている方やまだ閉経前の方は、ぜひこの機会にHRTとはどういうものか、今後の生活のヒントにしてみてください。
HRT(ホルモン補充療法)って?

閉経後、40代から50代にかけてエストロゲンの分泌量が急激に減り、めまいや肩こりをはじめとする更年期障害の様々な症状が出てきます。
HRTとは、減ってしまったエストロゲンを補充することで、ホットフラッシュ(ほてり、のぼせ)や動悸等の改善をサポートしてくれます。
子宮を摘出された場合はエストロゲン単独療法、子宮がある場合はエストロゲンと黄体ホルモンを併用した治療を行います。
日本ではまだ認知が低い治療ですが、欧米では定番の治療法です。
実はすごい!エストロゲンの役割
エストロゲンは”ご機嫌ホルモン”の別名があるほど心身ともにうれしいホルモンなのです。
自律神経の働きを安定させたり、コラーゲン生成を促したり、血管をしなやかにするなど、骨、関節、脳などを健康に保つ役割があります。
しかし、40代から減り続けたエストロゲンは、閉経するとほぼ0になってしまいます。
エストロゲンが低下することで病気のリスクも上がってしまうのです。
HRTの効果とは
更年期障害でよくある、ホットフラッシュ、肩こり、めまい、目や口の乾燥、手指のこわばりなどは早いうちに改善することが多いといわれています。
またHRTは、更年期障害の治療以外にも病気の予防としても使われています。
閉経後でも、長期でHRT治療をすることでこういった加齢による大きな病気も予防していけると国内外の研究でも発表されています。
HRTのリスク
メリットが大きいHRTですが、リスクとして副作用に出血や乳房が張ることがあります。これらは治療開始から1~3か月ほどで落ち着いてくることがほとんどで、あまり心配しなくても良いとされています。
また、HRTはがんのリスクが高まる!骨粗しょう症になりやすい!なんて声もいまだにあります。こういった噂で日本でHRTの治療をする人が少なくなっていました。
この噂の原因はかなり前の2002年ごろのアメリカの研究で、50~70歳の閉経後女性16万人ほどを対象とした研究データで「HRTは心血管系疾患、乳がん発生などにリスクがある」という中間報告があったからです。
しかし、のちにこの研究の問題点として、研究対象者の平均年齢も高く、高血圧や喫煙者が多くいたことが指摘されました。元から健康不良の高齢者だったことが分かり、HRTと心血管系疾患、乳がん発生リスクなどの関連性は低いと考えられます。
むしろここ数年の研究では、HRTは乳がんのリスクを下げる可能性が見えてきています。
HRTはいつから始める?

HRTは閉経頃から始めるのが理想。
しかし、閉経前の時点で更年期障害の症状を強く感じる、日常生活も支障がある場合は婦人科に相談してみるとよいでしょう。
閉経からかなり時間がたっていても、病気の予防として治療を始めるのもおすすめです。
ピルを飲んでいる場合は、中断間隔などによって変わってくるのでか医師の指示に従ってください。
治療をやめる場合はいつでもやめられますし、再開もいつでも可能です。
治療費は大体どれくらい?
高額な治療費がとられるのでは?と思われるかもしれませんが、実はHRTは更年期障害の標準治療なんです。HRTに使用するエストロゲンの種類によっては保険適用のものもあります。
相場は2000円程ですが、治療する内容や受診する医療機関によっても変わるため、1000~5000円くらいの金額を想定しておくと良いでしょう。
少し高いと感じる場合は医師と相談したり、セカンドオピニオンとして他の医療機関に相談するのも手です。ご自身が信頼できる医師を見つけることも重要なポイントです。
まとめ

まだ閉経前で不安という方も、早いうちから準備しておくことで防げるものもあります。
しっかりと知識を身に着けておくことで、更年期障害やそのほかの病気などの対策もしていけます。
今回はHRT(ホルモン補充療法)をご紹介しましたが、今後も新しい治療が出てくるかもしれません。
医療が発達した現代社会では、長寿だけではなく「健康で長生き」を目指して、予防医療なども増えています。
早めに対処をすることで、上手にQOL(人生の質)を上げていきましょう!